ブログ選集

出会いあれば別れあり。

なんか、ここんとこ出入りが激しいモンテベロですが、
「何故か辞めない神話」の続くシュクレクールでも、
2年間頑張った女の子が最終日を迎えました。

この子は和歌山から熱烈ラブコールを送って来た末、
出勤2日で「辞めさせてください宣言」をした子でした(笑)
「パンを作りたくて」、その気持ちだけで未経験で岸部に出てきて、
計量や副材料の管理などを頑張ってきた平井さん。
その最終日、「パン、作ってみたら?」と、そそのかしてみる。

見事に、そそのかされましたね(笑)

ホントに初めて触るミキサーに、初めて仕込む生地。
最低限のアドバイスだけ、担当の山本君に聞きながら。

ちょいちょい首をかしげながらも、生地が捏ね上がりました。

ペタペタ触って触診。

さ、ここから何か混ぜていくみたいです。

クルミとエメンタールと、

レーズンとサツマイモ。

平井さん作のパンが練り上がりました。

どうしたら良いかわからないのか、しばし放心状態で見つめ合う平井と生地(笑)


ここから、みんなの見守る中、「ひとりでできるもん!」が始まります。

が、戸惑う・・・

戸惑う、戸惑う・・・

みんなの視線を感じながら、
2年間の軌跡を思い起こしながら・・・、

あまりに遅いので、成形担当の岡本さんをヘルプに(笑)

まだ数種類しか成形したことがない中で懸命に作ったパンが、
ちょっと恥ずかしげに、でもどこか誇らしげに並びます。

成形した生地を生地管理室に入れて熟成します。

初めて自分で仕込んで自分で成形した生地ですから、
やっぱり自分で焼かなくちゃね。ということで、
明日も出勤する羽目になりました(笑)

まぁね、ホント良く頑張ったわけですよ。
何か形になったわけじゃないかも知れないですが、
二年間勤め上げた事実は事実です。
その二年間、意味を持たすも持たさないも自分次第。
今後、どう生きていくかに懸ってます。
僕は人生、死ぬまで全部通過点だと思ってます。
大事なのは、ここで何を残せたのか。
全てが通過点だと言ったものの、一つ一つ身を置いた場所で、
ちゃんと必要とされ、評価されなければ次にも進めません。
2年という歳月、決して長いわけではありません。
ですが、未経験からの、よりによってシュクレクール(笑)
「大変だった」の一言では済ませれないくらい大変な毎日だったと思います。
でも、そんな彼女が今日、

僕から花束をもらい、
みんなからプレゼントをもらい、

中途半端なクラッカーのお祝いを受け(笑)、

そして2年を振り返り、涙を流す・・・。

これはね、2日で辞めてたら流せなかった涙です。
辛いことがほとんどだったでしょう。
悔しかったこともいっぱいあったでしょう。
ただ、少しだけ「頑張った」という達成感もあるでしょう。
全部、独り占めしていいんです。
「何も返せなかった・・・・」と言ってましたが、とんでもない!
人生、まだまだ長いんです。しっかり返していただきます(笑)
それまで、君の「未来」を楽しみに出来る権利くらいは貰っといても良いよね?

さ、まだ開けてない箱は、モンテベロの細井さんから。

その箱を、恐る恐る開けてみると、

素敵やね・・・。良い仲間やね・・・。
ただね、細井さん。残念なことが一つだけあって、
皆で「ウワーッ!」ってなってね、
「プレート何て書いてるの~!?」ってなってね、
「・・・・・・なんとかクミコ、なんとか」
平井さん、フランス語、まったく読めなかったんよ!残念!!(笑)

まぁまぁ、そんな平井さんですが、
本日をもって・・・のはずでしたが、
明日「おまけ」のちょい出勤をもって辞めることになりました。
今まで、BBQやピクニックで接してくださったお客さんの中には、
少しくらい覚えてくださってる方もおられるかもしれません。
どうぞ、今後も応援してやってください。
彼女の夢はまだ終わっていません。
地元の和歌山でパン屋さんを開くんです。
いつかどこかできっと良い報告が出来る日が必ず来ると思います。
その時には「あぁ!あの平井さん!」と思い出してあげてください。
そんな日を楽しみに、今日は一先ずお別れです。

二年間、本当にお疲れさまでした!


卒業証書

昨日アップした記事、
みなさん温かい反応ありがとうございました。
うちを最終ステップにして独立していった子たちだけでなく、
いろんな形で店を去る子がいるわけです。
平井さんも、ある意味「志半ば」なのかもしれません。
ただ、うちで感じたことを土台にして、
今度は自分が描く未来に向けて、最適な選択をしていくことと思います。
そんな中、同じ和歌山出身の方から励ましのFAXをいただき、
本人、本当に喜んでいました。ありがとうございます。

さて、生地を成形したまでで終わってしまうのも何なんで、
とりあえず「おまけ」で出勤して焼き上げるまでをご紹介しますね。

一応、辞めてはいるのですが、
在籍時とあまり変わらない緊張感を漂わせています(笑)

オーブンに入れる為に、パンを並べます。

粉を表面にまぶすようですね。

こんな感じで。

クープも初め・・・いや確か何度か練習させたはずなんやけどねぇ・・・(笑)

窯入れは初めてかな?

よいしょっと。

パンはね、そんなに大きな選択肢はないんですよ。
材料があって、生地を仕込んで、分割やら成形のプロセスが絡んで、
発酵も一次発酵とか二次発酵とかあるくらいで、
対して大きな製法の違いはないんですよね。
で、焼けば取りあえずはパンになりますから。
そして料理と違って、値段に差がつけにくい。
どこでどんなキャリアを積んだって、どんな信頼や評価を得たって、
パンがパンである為に、パンとして在らせてもらえる範囲内の値段設定も、
半ば暗黙の了解的な範疇が存在してると思うんです。
美味しいパン屋さんも増えてると聞きます。そうなると、お客さんの舌も肥え、
求められるレベルもどんどん上がっていくことでしょう。
でもね、もともと高くない「パン屋さん」、
20円上げるのに「お客さん、離れへんかな・・」と頭抱えてるのが現状です。
原材料が高騰してても、生活を二の次にしてキャリアを積んでも、
値段に反映しにくいのが僕ら「パン屋さん」なんです。
ただ、僕は同じ200円のパンでも、
そこにどれだけの想いや背景を詰め込めるかで、
十分商品の差別化にはなると思ってます。
自己満足・・・なのかも知れませんが、
自己すら満足させられなくて商売など出来ません。
たまに街中でお店を覗くと、「これで200円取れんの!?」って、
ビックリするようなパンも結構ありますが、
どうか平井さんにはいつか自分が焼き上げる100円200円のパンに、
決して後ろめたさを感じない背景を詰め込めるような歩みを期待しています。
・・・・って、パンが焼き上がるまでの暇つぶしの小噺でした。

窯の中を覗き込んでいます。

お、焼き上がったようですね。

窯から出したパンを大事そうに並べます。

勿論、これは店売りには出来ません。
でも、二年間頑張った一人の女の子の「精一杯」が詰まってます。
いつも言うんですが、パンはね「自己投影」なんです。
盛りつけの最後に挿し色を足して華やかさを加えたり、
高さを出してお皿を演出したり、歪んだものを整えたり、
そういうの、パンは出来ないんですよね。
うちの製法でいくと、盛りつけは10時間以上前に終わってるわけです。
それがどんな表情になるのか、切り口からどんな具材が顔を出すのか、
焼いてみないと正確にはわからないことだらけです。
だからパンには「まぐれ」が存在しないんです。
「今の自分」がほぼ正確に映し出されます。
例えば僕に「10年前の、あの店で作ってたパンが素朴で良かった」と言われても、
決して同じものは作れません。上手くなっちゃってますから。
勿論、平井さんに僕と同じものを作れと言ったって作れません。
でも、それで良いんです。
なぜなら先に言った通り、パンは「自己投影」だからです。
虚栄を張って「出来る風」な仕事をしたって、
ちゃんとパンは今を映し出します。
その映し出された今を、如何に正確に把握し次に活かせるか、
成長はそこにしかありません。
不細工なパンだって、目を背けず向き合って、
そこに何の真意があるのか、パンが自分に何を言わんとしてるのか、
それを聞いてあげるのもブーランジェの務めやと思います。
ただキレイな形を追い求めて、
物づくりの本質を忘れた機械的で単調な仕事に終始し、
表情の無い、同じ見栄えのパンを作り続けて満足することが、
ブーランジェの仕事ではないと思うんですよね。

今日のパンは、はたして平井さんに何を告げたのかな・・・?
「お疲れ様」って労ったのかな?
それとも「もっともっと頑張らなあかんね」って伝えたのかな?

まだ温かいそのパンを、
一緒に働いたスタッフ一人一人に配り歩いて食べてもらってました。
僕には一応、真っ先に持ってきてくれました。
そこにはちゃんと「今」の平井さんが映し出されていましたよ。

これが彼女の、シュクレからの「卒業証書」。

前向いて、懸命に生きるんやで!!