ブログ選集

ちょっと一息…

まず最初にみなさんに「ありがとう」と言わせてください。
この度の「パティスリー ケ モンテベロ」の1周年に駆けつけてくださった皆様全員に、
心から「ありがとう」と言わせてください。

ホントに平坦では無い1年でした。
仕事に対する意識の違い。
パティシエという仕事に対する認識のズレ。
フランス菓子という味覚の領域や構築のバランスの曖昧さ。
毎日毎日・・・特に昨年いっぱいはホントに毎日、
「フランス菓子とはな~!!」
「パティシエって仕事はな~!!」
って、怒鳴りつける日々。
まさか本職に説教しなきゃいけないなんて夢にも思いませんでした。
それに加え、お客さんを拒絶するような店を作ってしまったが故に、
なかなか理解はおろか、認知すらしてもらえない現状でした。
まずは「良い物を作る」という最低限の仕事を突き詰め、
「1年は店と君ら、それとお客さんの成長の為に捨ててるから」
と、数字の設定は一度もせず、ただひたすら直向きに挑んできてくれたと思います。
途中、「望まれるところまで行けそうもありません」って折れそうになったこともありました。
僕の1年目は、ここまで追い込まれてただろうか・・・追い込み過ぎてやしないだろうかと、
自問自答を繰り返す日々でもありました。
だからこそ今回のお客さんのリアクションが、どれだけ彼らにとって嬉しかったことか。
周年イベントと銘打っての三日間、お客さん来てくれないんじゃないかって。
っていうか、そもそも来てくださるだけのお客さんすら抱えれてないんじゃないだろうか。
そんな中、彼らが考え、用意したアイデアに対して、
「来店」という形で応えてくださったことにホントに感動しました。
何より、彼らの労働や考え、1年間の試行錯誤が、
まだほんの少しかも知れませんが、報われたことが嬉しかったんです。
平日は人も疎らな暗い店内で、愚痴もこぼさず、集中力も切らさず、
少ない人数ながら頑張りぬいてくれたヴァンドゥースのみんなにも、
負担をかけてるぶん心から、心から「ありがとう」です。

ただ、これからもお客様に味覚の部分で歩み寄るつもりはありません。
引き続き、数字は求めないパティスリーであることに変わりはありません。
僕らは「フランス菓子」を作っています。
「濃い」だの「甘い」だの、
異民族が異文化に興味や敬意を表さない感想に耳を傾ける気はありません。
「異文化ゆえの違和感」は、もちろんあってしかりです。
むしろ「フランス菓子」を名乗っていながらにして、
「甘さ控えめで美味しい」「柔らかくてフワフワしたスポンジ」などと評されてる時点で、
それは紛れも無く「洋菓子」だと思います。
異民族が異文化に触れてるのにも関わらず、
それでも自分にフィットしないものをただ否定する浅はかさ。
日本人にとってはただの「食べ物」でも、フランス人にとっては立派な「文化」なんです。
ただ、その考え全てを否定するつもりはありません。
フランス菓子を日本人向けにアレンジ・・・なのか突き詰めれなかったのか知りませんが、
そういう文化も日本ならではです。パンも料理もしかりです。
それも一つのアプローチでしょうし、そこに需要があることも確かです。
お客さんに対する「親切」だと言い切る職人も少なくありません。
ただ、本来「パティスリー」とは「フランス菓子」を置いてる店であって、
その「フランス菓子」を作ってる職人を「パティシエ」といいます。
猫も杓子もお菓子作ってたら「パティシエ」だと世間では軽々しく言いますが、
洋菓子とは全く異なるジャンルだと認識してください。
好き嫌い、良い悪い、それは置いといて、違うジャンルなのです。違和感は当然です。
キュイジニエ、パティシエ、ブーランジェ。
本来は全てにおいて「フランスを表現する職人」なのだと思うんです。
それがそれぞれ職種が違うだけで、分かち合う心は同じじゃなきゃいけないはずです。
そこで学んだテクニックを使って作ればそう呼ばれるんじゃなくて、
表現して初めて、この異国で表現しようともがき苦しみ試み続けた職人が初めて、
キュイジニエ、パティシエ、ブーランジェと呼ばれるべきなのではないでしょうか。

僕らは日本人の舌を思い描いては作りません。
作るとき思い描くのは、本国フランスの精神性であり、味覚のトーンなんです。
ですから、そこをご理解できない、またはご理解しようとしないお客様に、
「美味しい」と思わすものである自信はありません。
なぜなら日本人を喜ばすことの前に、
いかにフランスに史実であるかを優先してるからです。
もちろん、まだまだそれもままならないかと思います。
ただ、これからもその違和感を楽しんでいただけたり、
「こういうの食べてんだぁ」と思いを馳せてくださったりして下さるお客さんの為に、
口の中からフランスが薫り溢れ出すような違和感を届けていけたらなぁ・・・と思ってます。
「甘い」「濃い」「くどい」などと一言で片付けているかたがおられたなら、
難しいことは考えなくても大丈夫です。出来たら、
「なんでこんな甘いもん食べてんのやろ」とか、
「濃い~な~。なんでこんなんが好きなんやろ」って、
半歩でもいいので異文化に興味を持ってみてください。
幾十にも重なった甘さの多重性ですとか、
異なったアプローチによるリズミカルな食感ですとか、
苦味や酸味を用いた異素材とのハーモニーですとか、
僕らの日常には無い世界が、少しは広がっていくのではないでしょうか。

そんなややこしい僕と働くうちのパティシエ・・・まぁブーランジェもそうなんですが、
ホントに大変やと思います。自分で言うのもなんですが(笑)。
特にシェフ パティシエの橋本にとっては、こんな苦しい1年は、
未だかつて経験したことがなかったんじゃないかと思います。
そしてそのシェフを叱咤しながら支えてくれたパティシエールの中村。
彼女にも感謝の思いは尽きません。
親バカやと思われるでしょうが、みんなホントに良く頑張ったと思います。
まだ本決定ではありませんが、来年早々には東京でもお会いできると思います。
あ、シュクレは行きません。悪しからず(笑)
最後に、この1周年に限定でお出しした、「ミルフォイユ」。

シェフ橋本含め、スタッフ一同、そして、こんな無理難題の店舗設計をを引き受け
形にして下さった、松田デザイン事務所の松田さん、尾崎工務店の尾崎さん、
服部電気の服部さん、ステンドグラス作家の藤本さん、画家の青江鞠さん、
こんな意固地な店を温かく支えてくださった全てのお客様・・・。
そんな様々な想いを、不器用ながら真っ直ぐでバカが付くほどお人好しな橋本が、
1層1層想いを紡ぎ、重ね、具現化したのがこの「ミルフォイユ」だったような気がします。
僕の中にまた一つ、大切なお菓子が増えてしまいました・・・。

シュクレの1周年とは、また全然違う感覚で迎えた1周年。
重ね重ね、足を運んで下さったお客様、モンテベロのみんな、
ほんとにほんとにありがとうございました。

ちょっと一息・・・の表題のつもりで書き始めれば、またこの有様。
ただ、最後の3行だけは今書いておきたくて・・・・
で、何行書いとんねん(笑)